遮音と吸音の違いとは?組み合わせで効果が変わる理由を解説

防音を調べると必ず出てくる「遮音」と「吸音」。この2つは別の現象で、効く相手も違います。取り違えたまま材料を買うと、期待した結果になりません。

この記事は当店の防音記事の基礎編です。他の記事の前に読んでおくと、判断の物差しができます。

遮音とは

音を向こう側へ通さないことです。音のエネルギーが壁で跳ね返され、反対側へ抜ける量が減ります。

遮音性能を決めるのは、材料の質量(面密度)です。重い材料ほど振動しにくく、音を通しません。これを質量則といいます。

おおまかな目安として、面密度を2倍にすると透過損失は6dB程度増えます。ここが重要な点です。倍の重さを足しても、6dBしか変わりません。さらに6dB稼ぐには、また倍の重さが必要になります。遮音が高価になる理由はここにあります。

遮音材の例:コンクリート、石膏ボード、合板、遮音シート、鉛シート

吸音とは

音の反射を減らすことです。多孔質の材料に音が入り込み、繊維や空気のすき間での摩擦によってエネルギーの一部が熱に変わります。

ここで押さえていただきたいのは、吸音材は音を通す構造だという点です。音が材料の内部に入らなければ吸音は起きないので、当然ながら通り抜けもします。

したがって、吸音材を壁に貼っても、隣室への音漏れはほとんど止まりません。これは製品の良し悪しではなく、原理による区別です。

吸音材の例:吸音パネル、グラスウール、ウレタンフォーム、カーペット、厚手のカーテン

並べて比較する

遮音 吸音
何をするか 向こう側へ通さない 反射を減らす
効く相手 隣室・階下へ漏れる音 自分の部屋の中で響く音
必要な性質 質量と気密 多孔質で音を通す
指標 透過損失、D値 吸音率、残響時間
効かない場面 隙間があると成立しない 隣への漏れは止まらない

遮音を成立させる条件

いちばん弱い部分で決まる

遮音性能は、壁・窓・ドアのうちもっとも弱い部分で頭打ちになります。壁がコンクリートでも、窓の性能が低ければ全体はそこで決まります。

住まいのなかでもっとも遮音性能が低いのは窓、次いでドアです。壁に何かを貼る前に、この2つを確認してください。

隙間があれば成立しない

音は空気を伝わるので、面のごく一部が開いていればそこを通ります。室内ドアのアンダーカットが10mm以上開いているような状態では、ドア本体をいくら重くしても効果は頭打ちになります。

費用対効果でいえば、隙間を塞ぐことが常に最優先です。数百円の隙間テープが、数万円の材料より効くことがあります。

後から貼る遮音材には限界がある

質量則から導かれる実務上の結論です。

遮音シートsaegiriは面密度が約2.1kg/㎡、saegiriPROで約6.3kg/㎡です。一方、石膏ボードの壁は1枚あたり約10kg/㎡、コンクリートの戸境壁は数百kg/㎡あります。

そこに数kg/㎡を足しても、質量が2倍になるわけではありません。壁への直貼りで大きな変化が出ないのは、このためです。

遮音シートが本領を発揮するのは、もともと軽い部材に貼るときです。中が空洞の室内ドアや、窓に立て掛けるプラダンであれば、元の質量に対する増え方が大きくなり、体感も出ます。同じ材料でも、貼る場所で結果が変わります。

吸音が効く場面

吸音材は隣への漏れを止めませんが、役に立たないわけではありません。効く場面がはっきりしています。

音量を下げられるようにする

フローリングと石膏ボードの部屋は反射が強く、音が重なって聞き取りにくくなります。すると自然とテレビや声の音量を上げます。

吸音パネルhisoka(ヒソカ)で反射を減らすと、同じ内容を聞き取るのに必要な音量が下がります。もとの音が小さくなれば、壁からも隙間からも漏れる音が減ります。

遠回りに見えますが、後貼りの遮音材よりこの経路のほうが確実に効きます。

入ってきた音を目立ちにくくする

外や隣室から入ってきた音も、反響が長いほど耳につきます。吸音で残響が短くなると、同じ音でも気になりにくくなります。

録音・通話の音質

Web会議、配信、楽器の録音では、反射音が混ざると輪郭がぼやけます。吸音はここで直接的に効きます。用途としては、むしろこちらが本命です。

遮音だけでは困ることもある

遮音材で囲うと反射面が増え、室内の響きが強くなります。漏れは減っても部屋の中はうるさくなる、という状態です。

本格的な防音室が、遮音層の内側に必ず吸音層を入れているのはこのためです。ただしこれは「両方貼れば本格的な防音になる」という意味ではありません。遮音層そのものが、壁の増し張りや浮き床といった工事で成立している前提の話です。

結局どう使い分けるか

  1. 隙間を塞ぐ。窓のサッシ、ドアの周囲、エアコン配管穴。費用対効果が最も高い
  2. 吸音で自室の音量を下げる。反射を減らして、出す音そのものを小さくする
  3. 床の衝撃音は床材で。歩行音や物の落下は、ΔL等級のある防音カーペットで下げられます
  4. 遮音シートは軽い部材に。壁ではなく、ドアや窓に立て掛ける板へ
  5. ここまでで足りなければ工事。隣戸の生活音、外の交通騒音、楽器はDIYでは届きません

よくある質問

吸音パネルを貼れば隣に聞こえなくなりますか

なりません。吸音材は音を通す構造です。効くのは自室の響きと音量です。

遮音シートと吸音パネルを両方貼れば完璧ですか

完璧にはなりません。併用する場合は壁側に遮音シート、その上に吸音パネルの順ですが、この組み合わせで何dB下がるかを測った試験値はありません。数値を保証できる方法ではないとご理解ください。

厚ければ厚いほど良いのですか

吸音材は厚いほど低い周波数まで吸収します。9mm厚のhisokaに対し、18mm厚のhisokaPROがより低い音まで扱えるのはこの理由です。遮音材の場合は厚みより質量が指標になります。

卵パックや薄い発泡スチロールは使えますか

吸音材としても遮音材としても性能はほとんどありません。発泡スチロールは軽すぎて遮音にならず、表面が閉じているため吸音にもなりません。

まとめ

遮音は質量と気密、吸音は反射の低減。効く相手が違うため、片方をもう片方の代わりに使うことはできません。

実務的には、隙間を塞ぐこと、吸音で音量を下げること、床材で衝撃音を下げること。この3つがDIYで確実に効く領域です。後貼りの遮音材は、貼る場所を選べば意味がありますが、壁に貼って劇的な変化を期待するものではありません。

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